ミニサイクル

ちょっとおセンチな話になっちゃうけど、死んだ親父は僕の事が大好きだった。もちろん僕も。だけど床屋だから、僕の試合を見れるチャンスなんてそう無かった。僕は小2からリトルリーグ。全国大会まで行ったけど、父ちゃんは見に来れず。高校に入って当然野球部に。一年坊主はしごかれて。そんな中、レフトの後ろにある林の中から見覚えのあるピンクのミニサイクルにまたがったままの人影。父ちゃんだ。運転免許のない父ちゃんは床屋の休みの月曜日、土手道とばして息子の野球を見に来てくれた。帰ってから僕も父ちゃんも「いたよね」なんて言わない。もう昔話だ。